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なんでどのコマにも同じ情報が書いてあるんだろう。改善のきっかけは素朴な疑問でした.
高原 太郎 毎日の慣れた仕事だからこそ,落とし穴が待っている。
このことがきっかけとなり,東芝那須工場の油井正明さんを中心とするメンバーが,開発を始めてくれました.最初は簡単にできるものと考えていた私だったのですが,実はMR装置だけではなく自動現像機のほうも対応させなくてはならないことが分かるなど,作業は思いのほか難航しました.なんどもなんども試作品を作っていただき,どうしても技術的にクリアできない部分もありました。ようやく形になり,出荷していただくことができたのは,実に1年6ヶ月後のことでした。一つのものを作るのは,これほどまでに大変なことなのだと再認識した次第です。 . |
できあがった新しいフィルムでは,フィルムの一番下段の部分に情報が集中配置されます。
まとめて表示するので,無駄がなくなって大きく表示できるようになりました。このフィルムにかかれた患者名と日付は,1メートル離れていても読むことができるんです。
いままで,患者さんが医師から画像所見に関する説明を受けるとき,フィルム上に書かれた自分の名前は事実上読めませんでした。とても字が小さいので,手元にかざしてみない限り判読できないからです。医師がシャウカステン(右図)にかけたフィルムを自分のものであると信じて見ているわけですが,こういった「信頼」がいかにもろいものかは,昨今のニュースをみていればいわずもがなですね。このディスプレイでは,患者さんと外来医の双方が,座ったままで名前や日付を再確認しながら説明を受けられるのです。
それから,
このフィルムは机の上においても名前を読むことができるのです。
いままで,フィルムはシャウカステンに掛けなければ見えないと言う考えが常識でした。
しかしこのフィルムに書かれた患者名はとても大きいため,左の写真のように白い机の上においただけで反射光でも見えるのです。フィルムを重ねて,黒いフィルムの上におかれた状態になっても判読することが出来ます。これなら,思いも寄らない間違いを減らすことができますね。
フィルムの確認作業から開放されます。
フィルム袋のなかに入ったフィルムを確認するのは,とても大変な作業です。フィルムの枚数が昨今はとても多くなっている上に,心ない誰かによってめちゃくちゃに入れられていることも多いからです。MRIのフィルムがCTや血管撮影の袋にはいっていることはざらにあります。
「どう,前回のフィルムの所見?」
「…えーっと,ちょっといま探しています」
画像診断というのは前回と比較して診断することが必要なのですが,こんな風に,フィルムを見ようとしたときに期待する場所に入っていないことがままあるわけです。
忙しいときには,確認が大変ですから,フィルムの間違いに気づくのが遅くなることもあります。
こういった,飛行機でいったら小さなニアミスのようなものは起こり得るわけですから,重大事故が起こらないとも限りません。もちろんまず最初にきちんと入れうることを周知徹底するのが原則ですが,それでも間違いが起こりますから,なるべくシステム側はフェイル・セーフの考え方で設計をしておくに越したことはありません。
こんなとき,このフィルムだったら,すごく楽に確認できるのです。
フィルムを揃えて,ぱっと上にかざせば,ほらご覧の通り。
文字が大きいので,IDと名前だけは透かしてみることが出来るのです。
この写真は,5枚のフィルムを重ねてみたときのものですが,きちんと揃えれば10枚でも大丈夫です。もし,万が一違う患者さんのフィルムが入っていたら,位置ずれがおこりますからこのようにきれいにみえなくなります。 このため瞬間的に間違ったフィルムがないことがわかるのです。

5枚のフィルムを重ねて見た様子
(名前やIDは透かしてみることができる)
And More... これからも改善が続きます。
このフィルムは,今年になってようやく商業機にインストールされました。しかしまだまだ満足のいく使い勝手ではありません。こんど作られる新しいシステムでは,最初から搭載することができるため,より思い切った設計ができるそうで,これからも改善はつづきます。
このフィルムディスプレイのシステムは,汎用性が高いため,CT用のシステムにも移植をしてもらえないか現在お願いしているところです.CTとMRIでは,フィルムの使い方が少し異なりますので調整が必要ですが,しかし患者名と日付を大きく表示したほうが見やすいという点には違いはありません.もしCTで動くシステムがあれば,より広い臨床の場で使うことが出来るようになると思います。
最近はディスプレイ上で診断することが多くなってきました。しかしながら,完全にすべてがPACS化される病院はまだほんの一握りで,ほとんどのところでフィルムをなくすことはできません。その意味で,このフィルムディスプレイは,まだ相当長い間活躍するものと思います。今後とも努力を重ねていく所存ですので,どうぞ暖かく見守ってくださるよう,お願い申し上げます。
関連項目:新しいフィルム・ディスプレイ CT版! (2001/12/9)